亡くなった人が生前大切にしていた時計や宝石も、相続財産に入れますか?

こんにちは 越谷の税理士渡邉広恵です。

4月のことですが、TKC会員の税理士向けに「相続税申告で間違いやすい点」というテーマでセミナーを行いました。

私がお題を出して、他の税理士先生方は申告でどう扱っているかを議論しあう形式にしたので、セミナーというよりも、討論会のようでした。

1つの事例から自分が扱ったことのない案件へと話が膨らみ、同じような案件でも、他の税理士先生は、どう申告したのかなど、普段他の先生のお話を本音で聞ける機会はないので、講師という立場で参加したのに、逆にとても勉強になりました。

セミナーのお題の一つに「形見分け」を選びました。

「えっ! 時計や宝飾といった故人の「形見」、これも相続財産になるの?」と思われた方、大丈夫です。

「形見」は基本的に相続財産に入れていない、というのが大方の税理士の意見です。

そうはいっても、判断基準をどう考えれば良いのかを、以下まとめてみました。

 慣習で行う「形見分け」

故人が生前使っていた身の回り品、これらを親族や友人が「思い出の品」として分け合うことを「形見分け」といいます。

形見分けは慣習に基づいて行うもので、法律に定められているものではありません。

だから、形見分けを行わなかったとしても問題は生じません。

「形見」それとも「相続財産」?

そもそも金銭的価値がないものを分けるのが、形見分けです。

故人の愛用品とはいえ、売ったらお金になるようなものは、「形見分け」ではなく「相続財産」として相続人の間で分割していきます。

売ったらお金になるとは、見方によってはどんなものでも価値あるものになってしまいます。

一般的には宝石・書画・骨董品などで 高価なもの が相続財産になります。(財産評価基本通達135)

いくらなら、相続財産?

高い金額を払って購入した宝石でも、市場で売買となると、よほどの値打ちものでもない限り、思いのほか値段はつかないものです。

所得税の譲渡所得では、「生活用動産の譲渡で、貴金属や宝石などの金額が30万円以下のもの」は譲渡所得にならない、と規定しています。

形見と相続財産の区別は法律で決められていませんので、判断する場合の参考にできるのではないでしょうか。(あくまで私見です。)

お金よりも宝石を買ったほうが、節税になる?

亡くなった時に金銭で持っていれば、相続財産になることは明らかです。

もし宝石(宝飾品)として持っていれば、「相続財産に計上しなくても大丈夫かもしれない・・・」と思う方がいるかもしれません。

しかし、税務署はお金の流れを見ています。

高額な金額を引き出し、その使い道が宝飾品であれば、相続財産として計上すべきと指摘されるでしょう。

もっとも、亡くなった人の財産の状況や経済状態をみて判断する場合があるので、そこは難しいところです。

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